遺言とエンディングノートは何が違うのか
1 遺言とエンディングノートは呼び方が違うだけ?
遺言という制度自体はかなり昔から知られていますが、近年の終活ブームの中で、エンディングノートというものも認知度が高まってきています。
エンディングノートとは、自分が亡くなるときに備えて、必要な情報や自分の想いを綴ったノートのことです。
書き方に決まりはありませんが、書く際の見本として、大阪法務局など様々な団体がひな形を配布しています。
遺言とエンディングノートは、いずれも「亡くなった時のために書いておく書類」であるため、どちらも同じというイメージをお持ちの方が多いかもしれません。
しかし、法的な性質については全く異なることには注意が必要です。
2 遺言は法的な効力を持つ
遺言は、亡くなった時に法的な効力が発生します。
例えば、お母さんが「長男に自宅の不動産を相続させ、長女に預貯金を相続させる」という遺言を作成しておいた場合、お母さんが亡くなった時には、その遺言に効力が発生し、基本的にそのとおりに財産権が移ります。
一方、エンディングノートに記載したことは、原則として法的な効力を持ちません。
エンディングノートは、あくまで書いた人の希望を記載したに留まるため、希望と異なった結果になってしまう可能性もあります。
そのため、ご自身の希望を法的に実現させるためには、遺言を作成する必要があります。
ただし、遺言は「どんなことを書いても法的効力が発生する」というわけではありません。
遺言によって法的効力が発生する事項は法律で定められていますので、それ以外のことを遺言に書いても法的な効力は発生しません。
3 エンディングノートの内容は自由に決めることができる
エンディングノートの利点は、法的な強制力がない分、記載内容に制限がないということです。
例えば、どういった施設に入所したいかや、延命治療、葬儀方法についてのご意見など、亡くなる前の希望も含めて自由に記載することができます。
一方で、遺言は法律で定められた事項のみ効力が発生するので、多くの場合、誰にどの財産を相続させるのかといったことしか記載しません。
例えば、入居したい施設や、延命治療に関するご意見を遺言に記載しても、法的な効力は発生しないことになります。
そもそも、家族が遺言を見るのは本人が亡くなってからということも多いので、亡くなる前のことを遺言に書いても、あまり意味は無いともいえます。
もし、施設、延命治療、葬儀などについてご希望がある場合は、あらかじめエンディングノートに記載し、家族に渡しておくなどの対応が必要です。