相続登記
相続登記についての専門家選びのポイント
1 相続登記を多く扱っているかどうか
不動産の登記とは、不動産に関する情報に変化があった場合に、その変化を登録しておくことを指します。
一例を挙げると、不動産の所有者が変わったり、不動産に抵当権が設定された場合などに、登記が必要になります。
このうち、相続登記とは、不動産の所有者が亡くなった場合に、所有者の情報を更新するものです。
しかし、相続登記には、様々な種類があり、専門的な知識が求められることがあります。
たとえば、相続人同士で不動産の分け方を話し合った場合、遺言書があった場合、裁判所で不動産の分け方が決まった場合など、相続による所有者の変更は、色々な種類があり、その種類ごとに必要書類が異なってきます。
そのため、相続登記を専門家に依頼する場合、相続登記を多く扱っており、手続きに詳しい専門家を選ぶことが大切です。
2 相続に強い専門家かどうか
相続は、非常に奥が深い分野です。
たとえば、相続登記をする際は、古い戸籍をたくさん集めなければならない場合がありますが、古い戸籍は手書きで作成されていたり、現在は存在しない地名が記載されていたりするなど、読み解く作業が難航しがちです。
また、相続登記をする際に、相続人の人数を確定しなければなりませんが、養子縁組や婚外子などの記載は、目立たないところにあり、見落としやすいポイントでもあります。
相続に強い専門家であれば、これらの見落としがなく、スピーディーな相続登記が可能になると思います。
3 税金面に詳しいかどうか
相続登記と税金は、直接関係がないようにも思えます。
しかし、不動産の新しい所有者が誰かによって、税金が大きく変わる可能性があります。
たとえば、お父さんが亡くなり、相続人としてお母さんと長男がいるようなケースを想定します。
お母さんが不動産の新しい所有者になれば、多くのケースで相続税は0円になります。
他方で、次にお母さんの相続が起きた時は、長男に多額の相続税が課せられる可能性もあるため、不動産の所有者を誰にするのかは、二次相続まで含めた慎重な判断が求められます。
そのため、相続登記の相談をする際は、税金にも詳しい専門家を選ぶことをおすすめします。
相続登記をしないとどうなるか
1 相続登記をしないまま放置すると色々なデメリットがあります
例えば、お父さんが亡くなった際、お父さんが所有していた不動産がある場合には、その不動産の名義変更をしなければなりません。
このように、不動産の所有者が亡くなった場合に、不動産の名義変更をすることを「相続登記」といいます。
相続登記をしないままだと、不動産に関する手続きを進めることができないなど、様々なデメリットが生じます。
ここでは、相続登記をしない場合に、発生するデメリットをご説明します。
2 相続した不動産を売却することができない
亡くなったお父さんの不動産をAさんに売却する場合、お父さんの名義から、いきなりAさんの名義にすることはできません。
その不動産を売却したい場合は、いったん、その不動産を相続した人の名義に変更した上で、Aさんが買ったという名義変更をする必要があります。
このように、相続登記をしないままだと、不動産の売却をすることができません。
3 不動産を担保にしてお金を借りることができない
相続発生後に、急にお金が必要になるケースがあります。
例えば、相続税の支払いをしなければならないのに、遺産の中に預貯金が少ない場合や、家業を継いだ相続人が事業資金を用意しなければならない場合などです。
このような場合に、相続した不動産を担保にして金融機関からお金を借りるためには、まずは相続登記をしておかなければなりません。
4 相続登記をしないまま長期間経過すると、相続登記が難しくなる
お父さんが亡くなり、相続人の長男、二男、三男は、相続登記をすることなく、放置していました。
その結果、次は長男、二男、三男の相続が起きてしまいました。
長男、二男、三男には、それぞれ4名の子(お父さんから見た孫)がいました。
この場合、お父さんから見た孫12名で、相続登記の手続きを進めなければなりません。
しかし、相続登記をするためには、戸籍謄本を何十通も取得したり、全員で遺産の分け方を話し合ったりしなければならないなど、とても複雑な手続きを踏まなければなりません。
そのため、結局誰も手続しないまま放置され、今度は孫のさらに子の世代(お父さんから見たひ孫世代)が、相続登記をしなければならず、ますます相続人の人数が増えてしまいます。
そういった事態を避けるためにも、相続登記はできるだけ早く行っておくことが重要です。
5 10万円以下の過料になることがある
以前までは、相続登記をしなくても、罰則などはありませんでした。
そのため、上記4のように、長期間放置した結果、相続人の数が増えてしまうという事態が起こっていました。
しかし、令和6年4月1日から、相続登記が義務付けられました。
これにより、相続によって不動産を取得した方は、不動産を取得したことを知ってから3年以内に相続登記の申請をしなければならず、正当な理由なく申請をしない場合は10万円以下の過料が科されることがあります。
所有者不明の土地が増え過ぎたことを受けた法改正であり、今後は、相続登記が必須になったと言えるでしょう。