遺産分割の期限
1 遺産分割には期限があるのか
相続手続きの中には、法律で期限が定められている手続きもありますが、遺産分割については、法律によって期限が定められていません。
つまり、ずっと遺産分割をしないまま放置しても、遺産分割ができなくなったり、罰金を支払わなければならなくなったりするといった事態は生じません。
しかし、期限が定められていないからといって、遺産分割をしないまま長期間経過してしまうと、次のようなデメリットが発生する場合があります。
2 預貯金などの遺産を相続できない
例えば、父Aさんが亡くなって、長男Bさんと長女Cさんが相続人だったとします。
父Aさんの遺産として預貯金1000万円があった場合、長男Bさんと長女Cさんは、その1000万円を相続する権利があります。
しかし、金融機関が父Aさんの相続を知ると、預貯金口座を凍結させてしまうため、預貯金の払い戻しができなくなります。
預貯金を払い戻すためには、長男Bさんと、長女Cさんによる遺産分割を完了させる必要があります。
期限が定められていないからといって、遺産分割をしないままでいると、預貯金口座の解約や払い戻しができない状態が続いてしまいます。
3 不動産の活用が難しい
不動産を相続した場合、不動産を売却したり、誰かに賃貸したりするといった活用方法があります。
しかし、不動産の売却や貸し出しをするためには、遺産分割を完了させ、不動産の所有者を確定させなければなりません。
不動産の所有者を確定し名義変更を行っておかないと、様々なトラブルの原因にもなりかねないからです。
例えば、遺産分割を完了させ、相続する方の名義に変更しておかなければ、不動産の買い手はつきにくく、不動産会社が売却の仲介をしてくれないといったケースが多々あります。
4 遺産分割そのものが難しくなる
先ほどの父Aさんが亡くなって、長男Bさんと長女Cさんが相続人というケースで、ずっと遺産分割をしないまま何十年も経過した場合を想定します。
長男Bさん、長女Cさんも高齢になると、認知症等で遺産分割ができなくなってしまうかもしれません。
さらに、もし長男Bさんや長女Cさんが亡くなれば、その次の世代が遺産分割を行うことになります。
しかし、孫世代やひ孫世代になると、相続人が何十人にもなっている可能性があります。
遺産分割は、言葉から連想されるイメージのとおり、亡くなった方が所有していた財産を分ける手続きで、相続人全員の合意が必要なため、相続人の数が多ければ多くなるほど、全員から合意を得るのが難しくなりますし、遺産分割の話し合い自体を行うことが難しくなってしまう場合もあります。