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相続で相続放棄・遺留分放棄の念書に効力はありますか?

  • 文責:所長 弁護士 大澤耕平
  • 最終更新日:2025年1月22日

1 相続放棄・遺留分放棄の念書に効力がない場合がある

相続放棄・遺留分放棄の念書には、法的な効力がない場合があり、法的な効力があると誤解してしまうと、後々、裁判等のトラブルに発展してしまう可能性があります。

相続放棄・遺留分放棄の念書に法的な効力がない場合、せっかく相続放棄・遺留分放棄の念書を作成したにも関わらず、念書に署名押印した(相続放棄・遺留分放棄をしようとした)相続人からすると、後から相続の権利や遺留分を主張することができてしまいます。

また、被相続人に借金がある場合、それを免れるために相続放棄の念書を作成したとしても、基本的に、債権者(被相続人に貸し付けた人)に対しては、その念書は法的効力を有しないため、結果として、被相続人の借金を背負うことになります。

そうなってしまっては、相続放棄・遺留分放棄の念書を作成した意味がなくなりますので、以下では、相続放棄・遺留分放棄の念書の効力や、効力がない場合の対策について、相続開始前と後とで分けてご説明します。

2 相続開始前に作成された相続放棄・遺留分放棄の念書

⑴ 相続開始前のものは法的な効力がない

基本的に、相続開始前(被相続人が存命の間)に作成された相続放棄・遺留分放棄の念書は、法的に効力がなく、無効なものと考えられています。

そのため、たとえ、相続開始前に、「私は、被相続人○○の相続について、相続を放棄し、また、遺留分も放棄します。」と念書を書き、署名、押印したとしても法的な効力はなく、相続開始後(被相続人が亡くなった後)、当該相続人は、相続人として相続分や遺留分を主張することができてしまいます。

⑵ 相続開始前に相続放棄・遺留分放棄の効力を持たせる方法

ア 相続放棄

相続開始前に相続放棄の効力を持たせる方法については、現在の法律ではありません。

相続開始前に、相続人の相続の権利(相続分)をはく奪(廃除)するためには、推定相続人廃除の申立てを家庭裁判所に行う必要があります。

家庭裁判所で認められれば、家庭裁判所から推定相続人廃除の審判書を取得できますので、それと必要書類を準備して、市役所に提出すれば、戸籍上も当該相続人について、相続分が廃除されたことが記載されます。

なお、家庭裁判所に認められた後に、大阪市役所に推定相続人廃除の申請を申し出る際の手続きについては、以下の大阪市のホームページをご確認ください。

参考リンク:大阪市・推定相続人廃除届

もっとも、推定相続人廃除については、簡単に認められるものではなく、被相続人に対する「虐待」や「重大な侮辱」、「著しい非行」がなければならず、認められるハードルはかなり高いと考えておいた方が良いでしょう。

そのため、特定の相続人に相続分を渡したくない場合は、遺言書を作成し、当該相続人には遺産が渡らないようにし、かつ、可能であれば後述の遺留分放棄の許可の手続きを行ってもらった方が良いでしょう。

なお、被相続人に借金があり、生前に相続放棄をしたいという場合については、他に法的に効力がある方法がほとんどなく、後述のとおり、相続開始後に家庭裁判所にて相続放棄の手続きを行った方が良いでしょう。

イ 遺留分放棄

遺留分放棄については、相続放棄とは異なり、相続開始前でも法的に効力がある方法により、遺留分放棄を行うことができます。

具体的には、遺留分を放棄する相続人が、家庭裁判所にて遺留分放棄の許可の申立てを行い、家庭裁判所が認めれば、相続開始前であっても遺留分放棄の効果が生じます。

もっとも、当該方法の場合、被相続人ではなく、遺留分を放棄する相続人が自発的に家庭裁判所で手続きを行う必要があり、また、その際、被相続人の遺産の内容や遺留分放棄をする理由(すでに十分な財産の贈与をうけているなど)を具体的に記載する必要があるため、遺留分を放棄する相続人が協力しない場合、相続開始前に遺留分の放棄を行うことは困難となります。

⑶ 遺産を渡したくない相続人がいる場合の対処法

以上のように、相続開始前においては、相続放棄・遺留分放棄の念書に法的な効力がなく、また、特定の相続人の相続分をはく奪する方法(推定相続人廃除)や相続開始前の遺留分放棄についても、裁判所が認めなければ効力がありません。

そのため、推定相続人廃除や遺留分放棄ができない場合、特定の相続人に全く遺産が渡らないようにするということは、法律上、かなり困難になります。

もっとも、特定の相続人渡る遺産をできるだけ少なくするという対策であれば比較的容易に可能であり、具体的には、遺言書を作成し、かつ、遺留分対策を行うことがおすすめです。

なお、具体的な遺言書の書き方や遺留分対策については、遺産の内容や相続人の構成などによっても大きく異なるため、ご心配な方は一度、専門家にご相談ください。

3 相続開始後に作成された相続放棄・遺留分放棄の念書

⑴ 相続人間では効力を有する

相続開始後に作成された相続放棄・遺留分放棄の念書については、相続開始前とは異なり、これ自体について法的な効力があります。

そのため、相続開始後に、相続人が相続放棄・遺留分放棄の念書に署名、押印等をしてしまうと、当該相続人は、相続分や遺留分を請求できなくなってしまいます。

なお、相続放棄の念書については、その後の相続手続き(遺産である土地や建物の名義変更、預貯金の解約等)を考えると、相続放棄の念書には、相続人自身に署名及び実印による押印をしてもらい、印鑑証明書もセットで取得しておいた方が良いでしょう。

万が一、実印での押印や印鑑証明書がもらえなかった場合、相続手続きができず、相続手続きを進めるために裁判を行わなければならなくなる場合もあるため、注意が必要です。

⑵ 相続放棄については相続人以外に効力はない

相続放棄の念書については、基本的に相続人以外には効力がなく、万が一、被相続人に借金があった場合、相続放棄の念書に署名、押印した相続人も借金を背負うことになります。

そこで被相続人の借金を背負いたくない場合など、相続人以外にも相続放棄の効力を持たせるためには、3か月以内に家庭裁判所にて、相続放棄の手続きを行う必要があります。

万が一、3か月の期限が過ぎてしまった場合、相続放棄ができない可能性がありますので、相続放棄についてご不安な方は、一度、専門家にご相談されることをおすすめします。

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